編集後記で、斉藤美奈子氏の「本音のコラム」を紹介したら、全文を読みたいという希望がありましたので、下記に転記します。
「左折の9条改憲」や「新9条論」を唱える高尚な坊やたちが、斉藤美奈子姐さんに、「敵に塩を送る気か、この甘ちゃんたちめ!」と現実的なタンカをきられ、叱られている情景が目に浮かぶようです。「左折の9条改憲」や「新9条論」が実現するような現実の力関係があるのならば、とっくに、戦争法案だって潰すことができているでしょう。憲法違反をしても何としても戦争ができるようにしたい権力がいて、それが難しいから、さまざまな意見があっても、立憲主義だけは守らせよう、というところでみんながまとまろうとしているのじゃないでしょうか。
現憲法は、9条に限らず、人類の叡智が表現されています。そのどれもが完全に実現されているわけではありません。人権条項の11条、12条、13条、14条、いずれもその途上にあるといっていいと思います。また思想や表現の自由を謳った19条、20条、21条、最低限度の生活を営む権利を保障している25条、等々未だ実現されるどころか、後退し始めています。なぜ9条ばかりに早急に完全性を求めるのか。9条を含め、現実を憲法に近づける努力こそが必要なことでしょう。その実現の過程は、紆余曲折があるでしょうが、掲げる憲法の理想を慌てて変える必要など全くないと思います。
「左折の9条改憲」や「新9条」を制定する困難なハードルを乗り越える気があるのなら、安倍政権を倒し、集団的自衛権を容認する閣議決定を破棄して、安倍政権発足前の状況に日本を「取り戻す」ことが先決ではないでしょうか。日和らないで、そのために連帯をしてほしいと思います。
************************************(以下東京新聞から引用)
《本音のコラム》(東京新聞11月11日)
敵に送る塩? 斉藤美奈子(文芸評論家)
東京新聞(十月十四日)に続いて、朝日新聞(十一月十日)が「新9条」を記事にした。「平和のための新9条論」(東京)、「憲法論議に第三の視点」(朝日)だそうである。
ま、議論だけなら、いくらでもおやりになればいい。だけど私が官邸の関係者なら「しめしめ」と思いますね。
「東京も朝日も『つぶさなあかん』と思っていたが、意外と使えますよ、総理」
「だな。改憲OKの気分がまず必要だからな。」
新九条論者の意見は、二項「陸海空軍その他の戦略は、これを保持しない。国の交戦権、これを認めない」の改正を意味する。専守防衛に徹する、集団的自衛権の行使を禁じる、国連中心主義にする、外国の基地使用を許可しない・・・。
いちいちごもっともである。でも「みなさまロマンチストだなあ」の思いも禁じえない。現行の条文でも「地球の裏側まで自衛隊を派遣できる」と解釈する人たちだ。条文を変えたら、おとなしく従うってか。新九条とはつまり、安保法論議の過程での禅問答に疲れ、「憲法を現実に近づけませんか」って話でしょ。それは保守政治家がくり返してきた論法だ。
このタイミングで、あの政権下で、改憲論を出す。彼らはウハウハである。
「あとは新九条論者と護憲論者の対立を煽るだけですよ、総理」
「だな。もう新聞も味方だからな」